Forbidden love












Written by Jun Izawa




(頭が…割れそう、だ!)
 手持ちのデコイはゲートを開く際に使いきった。
 シグナル異常で絶え間なく開閉する隔壁の隙間をすり抜ける度に、ティエリアの脳内端末に重い負荷が掛かっていく。システムが侵入信号をサーチしているらしい。指向性攻撃プログラムを必要以上に刺激しないよう、ティエリアはシールドのレベルをノーマルに下げた。こちらのアクセス権限が切れたとはいえ、運がよければ、ヴェーダのデータバンクにティエリアの端末IDが残っているはず。身内と知れば、攻撃プログラムも撤退するだろうと考えた甘さは、彼に味方した。
 徐々に静まっていく頭痛にホッと息をつき、眼鏡の奥から侵入路の果てを見据えた。
 生まれて今まで、ヴェーダのシステム最深部まで、触手を伸ばしたことはない。呼べば振り返ってくれる。呼ぶから応える。そのような情報モジュールの交感関係だった。
(僕は…私は……今から俺はその関係性を断ち切る)
 仲間には「ヴェーダを取り戻す」と宣言したものの、これからの行為は「奪還」などではない事を彼は承知していた。ティエリアにとって、神への反逆だ。
 ヴェーダにとって、ティエリアは手足の指一本の価値もない、単なる神経モジュール、生体端末だ。小さな使徒だ。
 ティエリアにとって、ヴェーダは作り出した存在だ。ヒトの宗教言語で例えるならば、創造主だ。神だ。イオリアの願いで創造された量子演算機が造りだした、ヒトを模したモノがティエリアだ。
 リジェネが、リボンズが語ったイノベイターなど知らない。イオリアの真なる計画なぞ、インストールされてない。
 施設から出たティエリアに託されたものは『戦争根絶』を謳った『ソレスタルビーイング計画』の下にヴェーダから与えられた『審判者』の資格と五機のガンダム。
 初めてガンダムヴァーチェに搭乗した時の自分が、もし今の己を見れば、どんなことを言い出すだろうか。「万死!」と罵声を浴びせるだろう。想像しやすくて、クックと彼は喉を震わせた。


『笑って…場…じゃね…だろッ!まだか!』
 鼓膜に響く仲間の罵声に、無意識に送信していたかと慌てて全身の情報を統合し直した。母艦の外壁に張りついたセラフィムを中継し、セラヴィーの自動攻撃プログラムを戦況に合わせて更新する。
 ヴェーダへの侵入シークエンスに手間取り、外での攻防まで頭が回っていなかったらしい。スメラギの戦略よりも遠いところでダブルオーが囮役に甘んじ、ケルディムが搭載したシールドビッドの大半がセラヴィーとセラフィムの援護に回っていた。アリオスが敵の陣形を拡散させ、ティエリアへ向く敵意の矛先を混ぜっ返す。
<悪かった。敵母艦の制御システム完全掌握は無理なようだ。砲撃制御は手動に変わっているから、よほどの狙撃手でなければ当ることもないだろう。そちらは任せる>
『オーライ、任された!』
 軽口叩けるほどの余裕もないだろうに、目の前の戦闘に集中する刹那とアレルヤの思いを汲んだようにロックオンは上向き調子な声を上げる。モビルスーツ乗りの素人が随分頼もしいマイスターになったなと、ティエリアはライルへささやかな賛辞を心に浮かべた。
 ティエリアの意を汲んだかのよう、セラヴィーとセラフィムのマニュピレーターがそっと前方のシールドビットに接触する。接触面の内側が緑色に発光し、ビットの装甲を覆っていく。
『シールドビット、GN粒子チャージ完了。オナカ、イッパイ!アリガトウ!』
『お、助かるぜ』 
<このままヴェーダの核ライブラリへの侵入を始める>
 真っ赤に爛れた円筒状のコードらしきものが隔壁を伝い昇っていく。まっすぐ、降りていくティエリア目掛けて。
 獰猛で貪欲に己を求め得ようとする醜い様相を見据えて、ティエリアは確信した。ヴェーダは、まだティエリアを求めている。ティエリアが獲得した情報に飢えている。ライブラリは、ティエリア・アーデの存在を許諾している。無茶な改竄に遭ったせいだろう、交感神経を模した接続ケーブルは酸に爛れたように無残な姿でいる。
 だが、リボンズ・アルマークは、ヴェーダのブラックボックスまでは穢せていなかった。
 フ、と笑んで、一端へ指をのばす。チョン、と先端が白い爪に触れたと感じた瞬間、全方位を囲まれ、ティエリアの全身を紅いうねりが飲み込んだ。
<!!>
 怯えを飲み込み、蛇のようにとぐろを巻くヴェーダの尖兵に警戒を解く。ケーブルから発する情報交感の命令が、ティエリアの全身を嘗め尽くす。拒否すれば、一目散にティエリアの意識…存在意識領域(ウェットデータ)を引き千切るに違いない。現に、ヴェーダは不要な情報は要らないとばかりに、彼の紫の制服を溶かしていっている。意識防壁さえ丸裸にして、奪い去るつもりだろうか。
(怖い…ヴェーダ…!)
 あからさまな欲求を突きつけられ、ゾッと怖気がした。
『…気ヲツケテ、気ヲツケテ、』
(ハロ…!)
 この状況を読んだつもりでもないだろうに、鼓膜に響いたハロの音声がティエリアを我に返らせた。
『死ぬなよ…ティエリア』
(死ぬ?)
 ロックオンの声が届いた。だが、今ここに居る彼には死ぬという概念は掴めなかった。
 モビルスーツにティエリアの生身は居る。母艦のシステムへ潜り込んだ侵入者もティエリアだ。記憶と意識を伴った、一個人の情報データの塊としてヴェーダと相対しようとしている。
 万一の失態を冒しても、外部モジュールの身体生命活動は無事になるようにしている。消失するのは、今の己、情報だけだ。
 ヴェーダのライブラリシステムがティエリアの周囲を埋め尽くす。セラフィムへ飛ばした脳量子波に障害が走る。ヴェーダからの欲求シグナルの波長が勝ってしまっているのだ。途絶えがちな外部リンクに舌打ち、ティエリアは<約束はできない>とロックオンへ返事を返した。せめてものと、外の愛機へ内包GN粒子を彼らの機体へチャージするように命じ、彼は赤黒いケーブルの渦に飲み込まれた。

* *

<…クッ、このままでは!>
 膨大な情報の波に飲まれ、イニシアチブを奪うどころか、存在意識さえ掻き消えそうになったティエリアは、ヴェーダの名を持つ広大な海原に慄き、必死で掴める縁(よすが)を求めた。
<駄目だ!絶望することはこのエリアでの敗北をヴェーダに示すことになる!何か、何か、対抗できるもの、ヴェーダよりも強く俺の端末を揺さぶるものは無いか!>
 意識を繋ぎ止めるものを求めて、溺れ沈む気力の中で腕一本海面に出すだけが精一杯だった。
<皆が僕を援護している。僕は失敗することはできない!僕は、俺は、この計画を成し遂げなければ、彼に向ける顔が、彼の望んだ世界をここで頓挫させるわけには>
 彼。
 思い描いたひとは、とてもリアルな感触をティエリアへ与えた。

<………ロック、…アアアアアアアアァァッ!!>
 唐突だった。
 ティエリア・アーデの中で産まれた閃きはゾクゾクと背筋を駆け上り、甘い疼きを齎した。
(愚かでも、いい)
 不意に湧いたこの考えが、もし間違えとしても……否、この世ならざる彼にティエリアを正すことはできやしない。
 ロックオンが望んだ世界を目指して、がむしゃらに戦ってきた。
 戦争根絶。テロのない世界。無闇に家族を奪われない世界。
『平和ってのは、うーん。こうだって決め付けられるもんじゃねえんだが』
『争いがないってだけじゃないと俺は思う』
『悲しいことを、悲しくならないようにすることじゃねえの?』
 永久に広がっていく記録の砂漠の中から拾い出した、言葉を見つめ返す。
 ロックオンが望んだ世界。成し遂げられなかった世界を作ると決めた、けれど、一つも成し遂げられなかったのだろうか、彼は、彼が無為に死んだと思いたくなかった。思いたくなくて、彼の死を価値あるものにしたくて、彼を、彼が、彼に喜んでもらいたくて、駆け抜けてきた。
 それが、彼の右目を代償に命を助けられ、彼の命で敵襲を逃れたティエリア・アーデの罪で、贖いと思っていた。
 けれど、もし。

「ああ…、…そこにいたんですね」
 雑多なデータを煩わしく頭から払い落としてくれながら、片手はしかと握り締めてくれていた。
 緑青の穏やかな双眸。癖のある髪が懐かしい。
 引き上げてくれた手を覆う黒の皮手袋へ痛ましい視線を送るが、彼は首を振って、ティエリアの過ちを正した。
「すみません。…僕はもう、貴方に戦ってほしくなくて…でも、貴方はロックオン・ストラトスなのですね。今も、」
 戦っている。
 彼からの声はない。だが、ティエリアの胸には響いていた。
 彼がヴェーダのトラップシステムとは思わない。考えもしない。何故なら、ボロボロに拡散したティエリアのウェットデータ(存在意識領域)のクラスタの光が集積して、彼を象っていたから。だから、彼はティエリアの味方だ。否、敵だとしても、彼の存在はいつだって、ティエリアの味方であるはずなのだ。

 ティエリアを庇い負傷した、彼の右目。
 絶望的な死を前に、クリスティナを庇ったリヒテンダールの行動。
 遊爆を避けるかのように、ケルディムガンダムを押し離したアニュー・リターナー。
 落下する軌道エレベーターの破片を撃ち落しきれずに、潰されていったモビルスーツたち。
『リヒティは、クリスの奴に惚れていたからな』
 計算しきれない矛盾する自己犠牲を、たった一言で表すことができると、四年前、イアンが教えてくれた。

「わたしは」
(愚かでもいい、)
 ロックオンが…ニール・ディランディが望んだ世界は、ティエリアの生きる世界でもあると気付いたからこそ。
<生きたい>
 愛されていたことを、今さらながらに実感する。
 本当に今さらだ。
「好きです…好き……僕も、貴方が」
 正解だといわんばかりに、彼から受けた接吻はとても甘く力強かった。

* *

 ガッと、撒きつくケーブルの一本を掴み上げ、ティエリアは爛れきって中の線が見える傷口へ無造作に爪を立てた。ビリビリと指先から這い上がる攻勢を踏み潰し、ハッキングの糸口にした。
「イオリアが…人間が作り上げたものを、人間が負けるわけが…ヒトが負かされてたまるものか!」
 お前の存在が何を宣うかと、ヴェーダが問う。
「俺はヒトじゃない。分かっている。だが、僕をヒトと言ってくれた人がいた。その人は、僕の中にいる。だから、そのひとの為に動く!そのひとが僕の為に望んだからこそ、僕は動く!俺は、僕は、私は、ティエリア・アーデの行動は人間に等しい!」
 矛盾にまみれた回答だ。矛盾を回避しようと計算しても、堂々巡りらしい。ヴェーダは自信に満ちたティエリアの言葉にうろたえたように、一歩、道を空けてしまった。
<そこだ!>
 隙を逃さず、ティエリアのモジュールは内部核へ捻じ込み、ライブラリの端末に強制アクセスを開始した。逆流するシステム構築に予め設定しておいたフィルターを掛け、プログラムは捨て去り、物理データのみを転送準備する。銀河級の情報集合体であるヴェーダの恐ろしさは、さきほどの一件で身に染みた彼である。スメラギの戦略プランどおりの収集はできないかもしれないと、一抹の不安が過ぎったものの、どうとなれとその不安を思うメモリすら惜しいとハッキングに集中した。
 ひとかけらの情報(データ)を掬い、ティエリアはトレミー2の通信網へ腕を伸ばした。セキュリティの網の隙間に指を差し込む。左薬指の爪先がオペレーター「フェルト・グレイス」の回線に繋がる。
『スメラギさん!ヴェーダよりデータ送信アクセスあります!』
『ティエリアね!そのまま分離サーバへ隔離して!』
 送信タイムラグの空白領域が、彼にトレミー2の様子を伝える。
 回線が繋がったことを確かめて、ティエリアは左手全ての領域を使い、トレミー2へのトランスポーターシステムを構築させた。己が身をフィルタにして、心臓に最も近いと彼の人に教わった左薬指は高負荷に耐えつつ、彼方の仲間へ情報を送り続ける。
 拾うデータ。捨てるデータ。
 捨てざる負えないものも、ティエリア一人でふるいに掛けるしかない。百年以上稼動した銀河級の情報バンクの中には、容量が大きすぎて転送しきれないものもあるし、今の人類に委ねるには危険すぎる知恵もあった。
 過ぎた薬は。毒だ。…擬似太陽炉のように。
 人間と触れ、人間の欲と業を知ったティエリアは、迷わずその毒薬から手を引いた。
<今与えなくとも、必要ならば何れ見つける>
 蓄積された各国の戦力図、歴史らは見捨てた。アロウズに直結する軍事資料、イオリアの初期計画、ソレスタルビーイングのエージェントデータ、今後スメラギらが優勢になる資料を中心に拾い集め、暗号圧縮してトレミー2に向けて送る。この作戦の為に技術班が造り出したサーバーは貪欲に情報を飲み込み続けるが、混乱する戦闘宙域とダブルオーが吐き出すGN粒子の量が災いして伝送量が一定しない。
 そうこうするうちに、混乱状態にあったヴェーダの基幹プログラムが沈静状態に戻り、ティエリアが拵えたライブラリー内のバイパスを異常アクセスと判定した。
<時間がない。外部刺激で防衛システムへ目を向けさせるか…>
 ティエリアはヴェーダを搭載する大型艦の艦内図をスメラギのモニターへ直接伝送し、直に攻撃するよう暗に提示した。
『そんなこと…!』
 仲間が居るのにできるかと、戦術予報士らしくなく感情をのせて否定する彼女の声を捉え、ティエリアはヤレヤレと首を振った。そして、ラッセの権限を奪うとGNミサイルを射出させた。
『おい、何やってんだ!』
『ラッセ?!』
『お、俺じゃない!』
『……ティエリアか、』
 混乱するブリッジに反して、刹那は冷静に犯人の名を告げた。遥か遠くで戦っていたダブルオーが、不意に敵母艦へ顔を向けた。外装を被弾した母艦が反撃に転じないことに気付いたのは、マイスターたちだけだろう。
『大丈夫か』
<大事無い>
 そう、大事無いはずだった。ヴェーダの気が被弾ダメージの試算に移った隙に、ティエリアは別モジュールで第二、第三の伝送端末を次々と生み出していった。潰されても別の端末が立ち上がるように複数を休眠状態にさせ、ライブラリを徘徊し、ティエリア本体は逃げ回る手筈だった。
<この、鼠がッ!!!>
<リボンズ・アルマーク?!>
 メインモジュールを伝い突進してくるワーム・ウイルスがティエリアの視界に入るまでは。
 皮肉なことに、刹那の心配が仇となり、彼と交戦していたリボンズが気付いてしまったのだ。
 ティエリアは、頭上の脅威に戦慄した。煙のように輪郭があいまいなウイルスは、掠りでもすれば一瞬のうちに感染拡大する凶悪な習性を持つ。アレに感染すれば、ただでは済まない。
 トレミー2への二次感染はモジュールを断線すればいいだけだが、ティエリア本体は孤立する。ヴェーダの自己防衛本能はどのプログラムよりも優先されている。彼の優位は失せ、ヴェーダは欲したティエリアの情報も何もかもを塵芥にしてしまう。
 それは、思考の無だ。ここからティエリアが帰化しなければ、セラフィムに搭乗する外部モジュールは生ける屍と化す。思考せず、戦うだけの装置にしかならない。
(死ぬ?)
 これが死。うっすら掴めた感覚に感慨に浸る暇はない。明らかに己を追うワームの手からヒラリヒラリと抜け出し、ティエリアは唯一の救い手であるヴェーダのセキュリティ・ガードドッグの到着を望んだ。
<データが!ヴェーダは何をしている?>
 穢れた触手を彼がかわした背後でまた一つ情報が壊された。貴重なライブラリーが一つのワームに蝕まれていくのを歯噛みしつつ、己が捕まっては元も子もないとティエリアは転移を繰り返した。トレミー2への情報送信も並列作業しているせいか、体が重く感じ始める。仮想電脳空間だけに、送信のタイムロス事象はティエリアの呼吸を苦しめさせた。
<まさか…リボンズがセキュリティを止めている?>
 敵となった今でさえ敬意を払ってきたヴェーダに対する仕打ちに、ティエリアの肌が粟立つ。
<百年以上費やしたヴェーダの演算データを惜しいと思わないのか、あの男は!>
 イオリアの遺産を食い潰しかねないリボンズの野心に、ティエリアは憎悪を覚えた。ロックオンを、ニール・ディランディを鼻で笑った時と同じ、否、それ以上の怒りが湧く。
 サーバー内の異物へはワーム一つで事足りるとでも高を括ったか、リボンズからの攻勢はそれ以上ない。モビルスーツを駆り、刹那のダブルオーと交戦中だ。
<そちらが、その気なら!>
 ワームの毒気をかわし、ティエリアは左腕を横に凪いだ。瞬時に、送信モジュールが消失する。右手を上に挙げ、上層フォルダへの足掛りを見つけると抱えられるだけの秘匿データを圧縮し、その身に入れ込んだ。その分、外に弾き出たメモリはティエリアの意識を構築する生体データ、記憶領域だ。その中に時限式のワクチン爆弾をプログラミングして、ティエリアはワームの鼻面に掲げた。本体は僅かに高層へと飛びのく。
 ティエリア個人を第一攻撃目標にしているウイルスならば引っ掛かるはず、と思った矢先に案の定飲み込んだワームの単純さに呆れる。数秒で弾けるその身がまた新たなワクチン素材となり、穢されたライブラリー・セルを修正するように命令してある。だが、直せないものは破棄するようにした。
<元には、戻らない>
 罠の為に、ティエリアが捨てたデータ(記憶)もそうだ。
 再び、彼は死というものが分からなくなっていた。
<元には…ああ、そうだ>
 リボンズによってボロボロとなった情報の巣を改めて眺め、ティエリアは限界を知った。持ち出せるだけ持ち出そうという考えを改めなければならない。再びリボンズの横槍が入れば、ティエリアのみならずトレミー2の航行も危ぶまれる。
<今、大切なのは情報ではない>
 ティエリアは、瞼を閉ざした。
<戦況を打破する機会だ>
 開いた先、緋色の目が見つめる先は、宇宙の闇だ。
(四年前の攻防戦で犯した失態を繰り返すところだった)
 ヴェーダのオペレーターからセラフィムのガンダムマイスターへと、かの意識が統合される。操縦グリップを握る手に力がこもる。深緑のシールドを払い、セラフィムのバズーカを放つ。
『ティエリア!』
「こちらの援護より、自分の後方に注意を払ってくれ」
『…ッ!起きた早々、お小言かよ!』
「寝た覚えはない」
 遠隔操作で、単機攻撃でいたセラヴィーガンダムをケルディムガンダムの背後に回し、その一方で、ティエリアは中断していたトレミー2へのデータ送信を再開させる準備を整えた。
『ちょ、合体しないのかよ?』
「フェルト、データ送信を再開させる。受信チャンネルをセラフィムへ合わせてくれ。スメラギ・李・ノリエガ、」
『なに?』
 モニターに映った彼女の表情を見て、ティエリアは一瞬言葉を飲んだ。次に出す手を悟っているのだ。それが、彼女の才であり、仕事だから…悲しい才能だと彼は彼女を始めてそう評した。
「…セラフィムを使います」
『使わないことはできないのね?』
 子供に問うような優しい声音に誘われて、ティエリアは無言で頷いた。
『ダメ!』
「フェルト?」
 スメラギの横にフェルト・グレイスの悲痛な顔がモニターに現れた。
『ティエリア、ダメよ。セラフィムの遠隔操作の上、データ送信だけでもあなたのメモリに負担が掛かっているのに、トライアルシステムなんか使ったら、最悪』
「最悪ショートか?…大丈夫だ、僕のニューロネットワークはそんなに柔な回路ではない」
『…でも、』
「送信したデータは直ぐに破棄する。空の領域もバックアップに回す」
『でも…』
 目尻に浮かぶ涙が丸い粒となって、ヘルメットのバイザーに着いていく。ティエリアは困ったように、唇を曲げた。笑んでごまかすには心苦しい場面だと思ったからだ。
「泣かないでくれ。僕は、悲しいことを悲しくならないようにしたいだけなんだ」
『…ティエリア』
『キザだな、おまえさんは』
 茶化すように二人の間へ割り込んだロックオン…ライルの顔も曇っていた。話す間も、アロウズを撃ち落す手を休めない。彼もまた、かの人のように心と体が乖離していくのだ。ガンダムマイスターの宿業かと償いのごとく、ティエリアは彼へ少しだけ笑みをこぼした。
「…君のお兄さんが言ったんだ、僕に」
『なら、仲間を泣かすことは止めるんだな。…セラヴィーの火器管制をこっちに回せ』
『ロックオン!』
『ライフルやバズーカの一つ二つ増えたところで、撃つのに大した違いはねえっての。こっちにゃ、ハロがいるんだ。任せろって』
『…僕も、悲しいことを悲しくならないようにしたい』
「アレルヤ!」
 飛行形態に変形したアリオスガンダムが急接近するなり、トレミー2周囲の敵を一掃する。そしてまた戦地を変え、敵を翻弄する。
『だけど、君を犠牲にしてまで願ってはいないさ。僕も、ロックオンも、みんなも!』
『セラヴィーの火器管制システム、ケルディムへの同期できますですぅ!』
「ミレイナ、勝手に!」
『………俺は止めない』
『刹那!てめぇは、ったく!』
『あいつに無駄はない。一度決めたことを早々変えるような奴じゃないことは…皆が、知って、るッ!』
 リボンズの猛攻に耐えながら、かわしながら、他に気を回す余裕などがあるはずもない彼の、それでも仲間の交信に混じってきた刹那の思いを、ティエリアは嬉しさと申し訳なさの間で受け止めた。
『…が、ひとりじゃないんだ…ティエリア!』
「知ってるさ。刹那」
 抑揚なく返事をすると、数多の通信モニター全てを切った。外部通信のリンクを外し、ティエリアは大きく深呼吸した。目頭が熱くなる。視界が潤むことは戦いに不利だと指摘する冷静さへ、ティエリアは「これが人間の不自由さだ」と返した。
 湿った溜め息を一つ吐いて、彼は音声のみ通信回線を開いた。
「…セラヴィーの火器管制を…ケルディムのマイスターとハロへ譲渡する」
『マカサレテ、マカサレテ』
『いい判断だ、ティエリア』
「トライアル開始後、敵のモビルスーツが硬直する。その隙に」
『卑怯な手だね。でも、僕とピーリスで撃つさ!』
「僕たちが四年前に講じたように、相手も独立したシステムを搭載しているだろう。おそらく、リボンズ・アルマークのモビルスーツには通用しない」
『問題ない。俺とダブルオーが駆逐する』 
『…あらあら、私の出番はないわねー』
「………すみません」
 いいのよー。朗らかな戦術予報士の声につられ、一時トレミー2の通信回線が明るい笑いで埋まる。イアンが、ラッセが、ミレイナが笑い、刹那でさえくぐもった笑みを返す中、ティエリアだけが声を出さず、セラフィムのコクピットの中で誰にも見られず美しい笑みを作り出した。
(最期に。みんなの笑い声が聞けて、よかった)
 そして、ティエリアは目を閉じた。祈った。神にではなく。
<もう一度>
 仲間の無事を。未来に。運命に。
<僕を導いて、ロックオン・ストラトス>

 再び目を開く時。それが最後の機会だとティエリアはセラフィムの操縦グリップを握り直した。…もう二度と触れることのない感触を味わうかのように。
 空の器となる外部モジュールをリボンズらにハッキングされないよう、念の為に、意識領域の五パーセントを隔離して再接続に暗号セキュリティを施した。もう、彼に迷いはない。…しかし、体から幽体離脱するようにスルリとコクピットから抜け出したティエリアの意識に、耳元に触れるよう新たな音声データが入ってくる。
『謝るなよ。…謝ってほしくねえんだ。こんな時、どう言うか……教えただろう?』
(…は、ずるい)
 教わったのは、君じゃ、貴方じゃない。あのひとだ。
 混濁する聴覚神経に戸惑いながら、ティエリアの意識は再びヴェーダの核へリンクした。幾億の書架の片隅に背もたれ、彼を待つ人影がひとつ。先ほどのワームと接触でもしたか、ところどころ解れたように穴だらけの輪郭が痛々しい。だが、相手は侵入者に気付くと、満面の笑みを浮かべ両腕を上げてくる。その姿は懐かしくて、愛しい。
 再リンクの時から、ティエリアは目を閉じたままだ。だが、仮想空間の情報は皮膚から染みるように伝わってくる。瞼の奥で金に煌めく双眸はゴーゴンの石化の呪い、崩壊へのスイッチと化している。
 仮とはいえ、彼の姿をゆっくり見られないでいる今を、ティエリアは恨めしく思った。だから、思いのたけを知らしめんと痛いほど腕を差し伸べた。

『な、ティエリア』

 ロックオン。
 ライル。それとも、ニールの声か。
 抱きしめられた。力強く束縛された実感を得た途端に、外部から響いたそれを正しく認識することは、今のティエリアにはできなかった。全身から交感する情報量の膨大さに、脳内の集積回路が悲鳴を上げ始めていた。
(痛い!…だが、暖かい)
 生身であれば、脳を割るような頭痛に悲痛な声をあげても可笑しくないほどの知識量が注ぎ込まれていく。しかし、ティエリアは他のデータと共にそれもまた仲間の元へ届けようと決めていた。
 彼は、先刻ヴェーダに飲まれそうになったティエリアを助けた彼とは違うことを悟っていた。あれは、ティエリアのデータの破片とライブラリのデータが混同したロックオンだった。今は、違う。
(優しいフェルト。絶対、君に届けてみせる)
 ニールの姿を借りて、ティエリアに触れる遠大なそれは……ニールであり、クリスティナ・シエラであり、歴代のガンダムマイスター達のパーソナルデータの塊だった。その中に、フェルトに知らされてない両親の情報も、アニュー・リターナーも、廃棄された彼の同胞たちもある。
 ヴェーダ奪還の策を提案した時、ティエリアはスメラギにも伝えなかったある決心をしていた。それがこれだ。秘匿義務の下に消し去られていった組織の礎たちの墓標をつくる。冷たい石造りではなく、未来への記憶として彼らのことを伝えていく。
 ヴェーダを乗っ取られた際にトランザムシステムを刹那らへ委譲したイオリア・シュヘンベルグのトラップシステムが構成員のデータ削除まで及ぶかもしれない危惧は考えていたが、かの始祖の優しさにティエリアは一縷の望みを賭けていた。
 ティエリアは、左手を上げた。ミレイナの働きで、トレミー2への回線は良好で一度に送る量が二乗化していた。
 それでも、彼らを送るには時間が掛かる。トライアルシステムと平行して処理すれば、ノイズの無いヴェーダの核内から脳量子波で送ったとしてもセラフィムガンダムの中のコンピュータの過負荷は免れない。
 昔ならば、ナドレから強制システムダウンをヴェーダへ送るだけでよかった。それをヴェーダが各機の伝達パルスに載せていった。今のシステムでは、ヴェーダからの固有パルスを盗み盗り、セラフィム自身が出力しなくてはならない。GN粒子の大量消費は元より、モビルスーツは無防備となるだけではない。擬似GNドライブ搭載型対策に造り直したトライアルフィールドの演算には、搭乗パイロットのティエリア自身の力もシステム起動の基礎に含まれていた。
(吉となるか、凶となるか)
 この瞼を開けば、戦況は一変するだろう。
 だが、その先を知ることも、我が身がどうなるかも、ティエリアには予想できない。
 それでも、これ以上仲間を傷つけたくなかった。
 それに、面影も抱けないフェルトに両親の素顔を、ライルの知らないニールの十年を、クリスティナの本名を、お調子者だったリヒテンダールの影を、寡黙なモレノの優しさを、プトレマイオスのみんなに聞かせたかった。
 ロックオンがその魂から穏やかで一番優しいものをティエリアに与えてくれたように、仲間たちに与えてやれればそれでいいと、彼は思った。

(たとえ、そこに僕が居なかったとしても)

 瞼をとじてから十五秒のロスが生じていた。
 人間の時間にして、十五秒の憂愁だ。
 これ以上、先延ばしにできないと甘えそうになる抱擁の温もりから体を引き離し、ティエリアは深く息を吸った。
 自ら、彼へ口付ける。唇から僅かにずれた着地点を、彼が笑って修正してくれた。仕草があまりにも彼らしくて、ティエリアはどれだけ彼を覚えているんだと、我が身に笑った。笑って、少しだけ泣きそうになった。
 ゆっくりと瞼を上げた先に、翡翠の視線が重なり、金の眼差しが濡れる。彼の残像が崩れていく。唇を通して彼が入ってくる心地を感じ、その分弾き出されていく己自身の構成クラスタを眉を潜め、頭痛を堪えた。
 薄れていく最愛のひとの奥から見えるヴェーダの中枢へ、ティエリアは右手を伸ばした。包帯がスルリと解けるように、我が身も崩壊していく様を、実感していた。
<欠片で、いい>
 中枢神経へ、瞬きほどの短さでもティエリアのIDが通ればいい。この宙域の擬似GNドライブへの周波数と伝送アルゴリズムデータ。それらは、ティエリアの抱える『彼ら』に比べれば、ゴマ粒程度の軽いデータだ。
<手に入れたら、貴方をすぐ連れていく>
 ボロッともげた右手の爪。右手の指は、残り三本だけだ。左手は、トレミー2とセラフィムへ繋がっている。代換モジュールにするにも、ティエリアの体の中は百万人のパーソナルデータでぎっしり詰まっている。
<あと、少し>
 IDが認証された。ヴェーダが彼を情報端末として、認識した。情報を奪われる前に、触手を奥へ奥へと伸ばす。右手の崩壊は止まらない。GNドライブのバックアップ処理システムに辿り着いた時、ティエリアの右手は小指しか無かった。
<もう、少し>
 小指の先に欲しかったものが引っ掛かる。指きりを交わすように、軽く曲げた。握りしめるだけの握力は持てない。脂汗を流しながら、それをヴェーダから引き出す。しかし、すぐさま異常アクセスと認識され、ティエリアのID権限が次々と奪われていく。
 視界が真っ暗になり、ライブラリーから弾き出される。視覚神経を封じられ、脳量子波の機能が低下した。ティエリアは左手に集中して、断裂された脳量子波を再構築させようとした。
 ヴェーダのガードドッグが彼を異端と断じ、噛み付こうと書架の段を駆け上がっていく音が暗闇の中から聞こえてくるが、焦りを噛み殺し、外へと集中した。変調に気付いたヴェーダが擬似GNドライブのパックアップ・パルスを変更しないうちに、手を打つ必要があった。
 タン、と飛び上がった物音を聞いた瞬間に、右肩に激痛が走った。
<うわあああああああああッ!>
 噛み付かれた。とっさに、彼は右手の小指を左の薬指へ絡めた。その直後、ガードドッグの噛み跡から下、右腕が消失する。

 かえりたい。

 何処へ。
 雑多なことは考えられなかった。
 ただ、ティエリアは消失の痛みに、思わず心が臆病になった。
 だが、一つの思念に凝縮されたことが幸いしたか、機能低下していた脳量子波が復調し、ティエリアは左手に確かな手ごたえを感じた。顔を上げ、暗闇の向こうへ緋色から金の煌きへ眼差しを走らせる。毅然とした表情に、幼い怯えは失せた。一人の戦士だ。
 左腕を上げる。現実世界のモジュールと触感が再リンクする。パルスの同調と指令暗号をセラフィムへ送る。トレミー2の補助サーバへアクセスを再開する。
 ガードドッグが、再びティエリアへ飛び掛っていく。自我意識の崩壊よりも、我が身に取り込んだデータの安否に、彼は秀麗な顔を曇らせた。それから何かを決意したように、右肩に滴る血という名の破片クラスタを、口に含んだ。
<ヴェーダ>
 脳裏で、神の名を呼ぶ。かつて慕った、全能の親。
 全能の神を混乱に陥れる手段を、彼は一つだけ握っていた。
 大口を開けたガードドッグの鼻孔目掛けて、ティエリアは口に含んだ血を吐き出した。仮想空間だ。現実の犬ではないし、血もそうだ。だが、神の創りだした猟犬は苦しげにそこらを転げ周り、数セカンド後に存在を消失した。と、同時に、ティエリアは足元の揺らぎを感じ、上層へ全速力で飛び上がった。今まで弾かれてばかりだったコアゲートが溶けていた。それを潜り抜け、傷だらけの体を庇い、ティエリアは現実への扉を模索した。
<ヴェーダ。これが、あなたが欲した僕の情報。ティエリア・アーデが培った感情。僕の、四年間の痛みです>
 ウイルスの習性を帯びたメンタルデータはガードドッグを介し、ヴェーダの中枢に届いたのだろう。
 銀河級の全能の神。量子コンピューターが知れないものは、一つだけ。人間の不確かな『感情』と呼べるメンタルデータ。
 イオリアがわざと教えず、それ故にヴェーダが欲したそれが諸刃であったことを、ティエリアは混乱する領域の様相で実感した。おかしなものだとも感じた。
 彼個人では抱えきれない情報量を平気で収めるヴェーダが、彼一人が嘆いた苦しみ四年分の記憶を上手く処理できないなんて、研究者の誰一人予想しなかったに違いない。あの、イオリア・シュヘンベルグさえも…。
 ティエリア自身、ロックオンの喪失で得た悲しみを昇華しきれていない。それでも、他へ向ける目は養った。この四年間、仲間がいた。仲間が与えてくれた。
 ふと、ロックオンが掛けた言葉へ返してないな、とティエリアは埒もないことを思い出した。仲間を思い、心が軽くなったからだろうか。それとも、頭上の闇が仄かに温かく感じ始めたからだろうか…。
『こんな時、どう言うか……教えただろう?』


 体はボロボロだった。捲れた表皮の下で虹色に輝くデータを取りこぼさないように、彼は体を丸め、外部モジュールへの帰化工程をリトライしていた。どうしても抱えるデータが膨大すぎて、意識と一緒に帰るにはメモリーが足りない。ティエリアは己が身を削っていってはリトライを掛けた。
 ヴェーダの中は不安定になっていた。量子演算処理がこのまま落ちていけば、休眠状態になり、中に閉じ込められたティエリアともども彼らのパーソナルデータも閲覧不可能になる。
 ティエリアは、綺麗だといわれた髪を千切った。僅かに軽くなったデータ量に比例して、ティエリアの中の思い出が消えていく。文字通り身を切るような思いで、己の記憶データをうねる渦へ投げ捨てていく。身が軽くなる。代わりに、心が空しくなる。作業を進めるにつれ、空しさを感じることもなくなった。次は、悲しくなった。悲しみが失せ、泣くことを忘れ、痛みを感じることもできなくなった。
 それでも、抱える宝物は重すぎた。
 だが、空ろなティエリアはそれを捨てようとは一向に考えなかった。
 抱えるものが宝物というよりは、虹色のデータに半透明な体が寄り添う形までとなっても、かえることができない。
 あと僅か、身が軽くなれば、かえれる。
 最後の最後、ティエリアの掌に残り、捨てられる物理領域は二つの認識データとなった。一つは重要すぎて捨てられるものではない、数年に渡るガンダムの操縦技能とマイスターとしての知識だ。もう一つは変哲もない、かなり古い音声データだ。この音声データ一つ削除すれば、セラフィムへの帰化も叶うだろうことは、ティエリア自身が承知していた。
(……)
 それらを見つめ、ティエリアは一つを捨てた。
 軽くなった身を帰化させる直前、何故かは分からないが、意識を戻したらこう言わなければならないと、空いた領域に一つの言葉を発した。帰化工程の前の記憶は消失しているので、それが何への返事か彼は知らない。


「あり、が」


 ソレスタルビーイングのガンダムマイスター、ティエリア・アーデの放った『最期』の言葉だ。


『ティエリ』
「トライアルシステム発動。放射フィールド最大展開。コンマ三セカンド、トレミー2伝送処理を再開」
『…どうしたんだ、ティエリア!』
「転送速度、現状を維持。転送完了まで千八百セカンド」
 途切れた言葉を紡ぎ直すことなく、続けざまに処理コマンドを発す声音は硬質で機械音のようだった。
『ア、アリオス、迎撃行動を再開する!』
『ティエリア、一体どうしちまった?』
 ロックオンが相棒のハロへ強制アクセスを命じたその頃、セラフィムのコクピットに座るティエリアは、虹色に輝く瞳に幾筋もの涙を流していた。瞬きを忘れたように、ただ延々と。


 生身のティエリアが目を閉じて再び開くまでの三十秒刹那の攻防を、喪失を知るは、その涙だけなのだ。


- end -



『さいごの実』
2009/04/13(月) 14:42 終筆
サンライズ禁
BGM:さいごの果実(Maya Sakamoto)
*さりげなくトライアングラーしてます

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